肝臓が悪いとどんな症状が出る?|見逃しがちなサインと原因・回復方法まで解説
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、症状が出にくい臓器です。 このページでは、肝臓が悪くなると現れる症状や痛みの場所、原因、そして回復のための生活習慣まで、専門医がわかりやすく解説しています。
- 肝臓が悪いとどんな症状が出る?
- 肝臓が悪いと現れる体の異変・部位別のサイン
- 肝臓が悪くなる原因
- 肝臓の不調を放置するとどうなる?|症状から重症化するケース
- 肝臓を回復させるには?
- 気になる症状がある方へ|まずはご相談ください
肝臓が悪いとどんな症状が出る?
肝臓には、悪い箇所が生じても残りの機能がその欠点を補う「予備能力」が高いため、深刻化するまで自覚症状がなかなか現れないことがよくあり、「沈黙の臓器」と称されています。
そのため、肝臓の異常は自覚しにくいことが多いですが、以下のような症状として現れることがあります。
チェックリストでセルフチェック
- 最近疲れやすくなった
- 顔色が悪い・目の白目が黄色い
- 肌がかゆい(湿疹がないのに)
- お腹が張る、むくみやすい
- お酒が弱くなった・美味しく感じなくなった
- 右肩や背中が重い感じがする
2つ以上当てはまる場合は、肝機能の低下が隠れている可能性があります。
もし、肝臓の疾患が
進行すると・・
疲れがとれずだるい(全身の倦怠感)
脂肪肝、慢性肝炎、肝硬変などの慢性肝疾患が進行すると、食欲不振や吐き気とともに強い倦怠感を感じることがあります。また、急性肝炎でも同様の症状が出ることがあります。
白目や皮膚が黄色くなる(黄疸)
ビリルビンという色素が血中に増加することで、白目や皮膚が黄色く変色する症状です。尿の色が濃くなることもあります。
肝臓病に罹ると、排泄されるべき黄色い色素が血液中に漏れて皮膚や白目が黄ばんでしまいます。
肌がかゆい(皮膚に異常がないのに)
皮膚に異常が見られないのにかゆみを感じる場合、それは肝臓病が原因かもしれません。肝臓病のかゆみには、全身がかゆく感じる、薬物療法の効果が発揮しにくいといった特徴があります。
肝臓病によるかゆみは、かゆみを引き起こす物質とかゆみを抑える物質のバランスが崩れることが一因とされています。
男性における女性化乳房
男性の場合は肝硬変にかかると、女性のように乳房が腫れることがあります。押すと痛みを感じ、しこりを触れることがあります。肝臓での女性ホルモンの排出が低下し、血中濃度が上昇することで起こります。
足がむくむ・お腹が張る(浮腫・腹水)
肝硬変が進行し肝機能が著しく損なわれると、血液の循環が悪化します。その結果、尿量の減少や脚のむくみである浮腫、腹部に水が溜まる腹水が見られることがあります。
肝臓が悪いと現れる体の異変・部位別のサイン
肝臓の不調は「痛み」として現れることは少ないものの、体の特定部位に違和感や張りとして現れることがあります。
右肩〜背中に違和感(肝臓の影響)
肝臓は右側にあるため、機能が落ちると右肩から背中の上部、肩甲骨周辺に痛みや違和感を感じることがよくあります。
右腰が重い・だるい
肝機能低下は血行にも影響を及ぼすため、肝機能が衰えると腰への負担も大きくなります。特に右側の腰に違和感や痛みを感じることがあります。
背中の張りや慢性的な疲労感
肝臓の機能が低下すると全身の血液循環が滞りやすくなり、背中全体が張ってくることがあります。その結果、肩や背中が凝り、慢性的な疲労を感じることが増えます。
肝臓が悪くなる原因
ここまでご紹介したような症状が出る背景には、以下のような原因が潜んでいることが多いです。
ウイルス
日本にはB型肝炎ウイルス感染者が約150万人、C型肝炎ウイルス感染者が約200万人存在します。これらのウイルスは血液を介して肝臓に感染します。
B型肝炎ウイルスは出産時に母から子へも感染しますが、現在では輸血血液のチェックやワクチンの普及により、感染を防ぐことが可能になりました。
一方、C型肝炎ウイルスについても、輸血血液の厳格なチェックが行われており、感染リスクは極めて低くなっています。
アルコール
お酒に含まれるエタノールは肝臓で分解されます。多量のアルコールを摂取すれば、肝臓への負担が増します。さらに、アルコールは水に溶け、脂肪を分解し、蛋白質を変性させる作用があり、体の細胞に直接損傷を与えます。
さらに、肝臓でアルコールが代謝され、毒性の高いアセトアルデヒドが生成されると、肝臓の線維化が進みます。
肥満(生活習慣)
近年では、暴飲暴食や運動不足による肥満が増加しています。肥満者の約80%が脂肪肝を抱えています。また、肥満や糖尿病の患者様に見られる炎症や線維化が進行し、脂肪肝から肝硬変に移行するケースも報告されています。肝臓の機能を改善するには、生活習慣を見直すことが不可欠です。
肝臓の不調を放置するとどうなる?|症状から重症化するケース
「少し疲れやすいだけ」「最近お酒が弱くなったかも」…そんな軽い不調の裏に、肝臓の機能低下が隠れていることもあります。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、症状が現れにくい反面、放置すると知らないうちに病気が進行し、命に関わる状態にまで悪化することもあります。
特に次のような深刻な合併症が起こる可能性があるため、初期段階での気づきと対応が重要です。
進行により起こり得る合併症
- 糖尿病:肝機能が低下すると血糖の代謝がうまくいかず、糖尿病のリスクが高まります。
- 食道・胃静脈瘤:肝硬変により門脈の血圧が上昇し、消化管の血流がうっ血して瘤が形成されやすくなります。
- 肝腎症候群:肝臓の病気が進行することで、腎臓の血流も悪化し、腎機能が著しく低下することがあります。
これらの合併症は、いずれも早期発見と治療によって予防できる可能性があります。「なんとなく体調が悪い」と感じた時点で、早めに医療機関を受診しましょう。
肝臓を回復させるには?
肝機能の低下は、日常生活にじわじわと影響を及ぼします。「疲れがとれない」「食欲がない」「お酒が弱くなった」などの小さなサインは、肝臓からのSOSかもしれません。
肝臓を守り、回復を促すためには、生活習慣の見直し(セルフケア)と、専門的な検査や治療(医療対応)の両方が重要です。
セルフケア:日常生活でできる肝臓ケア
- 1日3食、腹八分目を目安に規則正しい食生活を
- 脂っこい食事、アルコール、加工食品を控える
- 肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質をバランスよく摂取
- 軽めの運動や十分な睡眠で代謝を促進
- ストレスをため込まず、リラックスできる時間を意識的に持つ
医療対応:専門的な検査と早期治療
「体調がすぐれない」「健診で肝機能異常を指摘された」など、気になる症状がある場合は、医療機関での検査が重要です。
- 血液検査で肝機能の数値をチェック
- 超音波(エコー)検査で肝臓の状態を可視化
- ウイルス性肝炎の有無を確認(B型・C型など)
当院では、肝臓専門医による診察と、高性能な超音波検査機器による精密な評価を行っております。早期発見・早期治療が、重症化を防ぐカギです。
気になる症状がある方へ|まずはご相談ください
「疲れがとれない」「お酒が弱くなった」「健診で肝機能異常を指摘された」など、少しでも気になることがあれば、お早めにご相談ください。
当院では肝臓専門医による診察と、最新の超音波検査機器を用いた肝機能評価を行っています。